Q&A よくある質問

この件について、よくされる質問をまとめました。

事案をわかりやすく説明しています。

保育園について

Q.A子さんが保育園を1か所しか申し込んでいなかった、というのは本当ですか? 

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いいえ、A子さんは、認可保育園の平成26年4月入所については、自宅から通えると判断した保育園全てを申し込んでいました。自治体が(多くの場合が優先順位を決めるポイント制による)入所選考をする認可保育園だけでなく、個々の保育園がそれぞれの方法(先着順や抽選など)で入園手続きを行う認証保育園にも申し込んでいました。

Q.ではなぜ、高裁判決ではそのような認定になっているのですか? 

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証拠として提出されている「保育所保育実施不承諾通知書」に、保育園が1か所しか記載されていなかったからです。これは、Aさんが申し込んだ保育園は1箇所だったことを意味しますが、高裁は証拠を引用するにあたって、明らかに「時期」を間違っています。高裁が根拠としている「保育所保育実施不承諾通知書」は「2月」入所分のものであり、「4月」入所分のものではありません。通知書の日付が1月31日付となっていることからも、2月20日以降に通知される4月入所分の選考結果ではないことは明らかです。つまり、根拠とされているのは、新年度に向けて行われた選考の通知書ではなく、「2月」に保育園に入所できないという通知書なのです。 

Q.なぜA子さんは、2月分について1か所しか申し込まなかったのでしょうか?

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これは、A子さんの子が早生まれであることに関係しています。「保活」をしたことがある方ならお分かりと思いますが、知らない方のためにいくつか状況を説明しなければなりません。1つは、育休が原則1年であること、次に保育園の入所は年度が変わる4月入所が一般的であること、そして、育休を延長するためには「不承諾通知書」が必要なこと、です。
まず法律では、育休は原則1年とされており、1年経った時点で保育園に預けられなかった等の事情がある場合に6か月(現在は12か月)の延長が認められることになっています。Aさんの子は早生まれで、0歳児4月入所は月齢が足りず、申し込みができません。保育園における年度途中の入所は、空きが出ない限り入れず、とくに0歳児クラスは保育士の配置基準が保育士一人に対し子どもが3人までと枠が少ないこともあり、A子さんが翌年1歳児4月入所を目指していたのはとても自然なことです。
しかしながら4月の新年度を迎える前に、1年の育休期間が終わってしまうので、いったん「育休延長」の手続きを取ることになります。つまり、A子さんが育休を延長するためには、4月入所分よりも前に保育園に申し込む必要がありました。


そのために、A子さんは、自治体に手続きを確認したところ、4月分とは別に、育休延長のため、育休が終了する前の2月入所分を形式的に申し込むようにアドバイスされました。そこでA子さんは、形式的なものだからと、とくに欄を埋めることなく、2月入所分として1か所記入し、4月入所分としては、通える範囲の保育園全てを記入しました。そして、2月分と4月分、それぞれ不承諾通知書を受け取っています。

Q.なぜ、2月入所分の不承諾通知書が証拠として提出されているでしょうか?

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育休延長手続きのために、「不承諾通知書」を会社に提出する必要があるのですが、手続きは1度のみなので、2度提出する必要はありません。会社に提出する必要があるのは、A子さんの育休が終了する前の2月入所分のみです。
それを、会社はあたかもA子さんの「保活が不十分であった」かのように主張する証拠として提出しました。そして、高裁は十分な証拠調べをしないまま、会社の主張をそのまま鵜呑みにしているのです。
この点については、地裁の証人尋問にて触れられており、地裁判決ではこの会社主張を認定していません。

Q.高裁判決では、A子さんが復帰後にすぐ保育園を見つけた、というのは虚偽の可能性が高い、と述べていますが、実際はどうだったのですか?

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虚偽ではなく、実際に入園できる保育園を見つけていました。

A子さんは、一度は週3日勤務として復帰したものの、仕事のやりがいから一日も早く週5日勤務に戻りたいとう思いから、9月に復帰後、自宅の近くだけでなく、通勤経路まで広げて保育園を探しました。そして乗換をする駅前にある、認証保育園の空きを見つけ、見学を済ませ、あとは入園の手続きをするだけ、という状況でした。この点についても、高裁判決は会社の主張だけを基にして書かれています。

Q.会社はなぜ、A子さんが保育園を見つけたのは嘘であると主張しているのですか? 

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会社は、高裁に控訴した段階で「乙102号証」とする証拠を提出しました。これは、会社側の代理人が、A子さんが申し込んだという保育園の運営会社に問い合わせたYes/No質問形式の文書です。この文書から、9月にこの保育園に3枠の空きがあったこと、10月にA子さんの子の入園が決定した記録は(本社に)ないこと、9月中に入園をキャンセルした者はいないこと、などがわかります。会社は、運営会社の代表(当時)によるこの回答をもって、A子さんが当時入園できる保育園を見つけたのは虚偽だったと主張しました。

Q.保育園にAさんの子の入園が決定した記録がないようですが、本当に、9月に入園手続きをとっていれば、A子さんは10月から子を預けることができたということでしょうか?

 

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はい。まず、前提として、この保育園は認証保育園でしたので、自治体からの「入園決定」といった書面が来るのではなく、保護者が直接、保育園と入園手続きをすることになります。

A子さんは9月初めに会社に連絡した時、「申し込みをしていた十数園のうちのひとつから、電話が来まして、10月から空きが出るとの連絡を受けました!」とメールしています。A子さんは、見学をした後、保育園から「空きが回ってきた」という連絡を電話で受けており、後は来園して手続きをすれば入園が正式に確定する、というところまできていました。しかし、9月の面談で、会社から正社員復帰は「いつになるかわからない」と時期が示されなかったので、やむを得ず入園手続きを断念したのです。

Q.それではなぜ運営会社に、Aさんの子の入園が決まったという記録がないのでしょうか。 

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この保育園では、入園手続きをしていない人の記録は残していないそうです。そのために、入園手続きをする前に入園を辞退したA子さんについての記録は残っていないようですが、だからといってA子さんがこの保育園に問い合わせしていないとか、この保育園から空きがあるという連絡を受けたことが嘘だ、ということにはなりません。このことは、A子さん側の代理人が運営会社の代表者に確認して、高裁にも証拠として提出しています。

Q.すぐに正社員に復帰できなくても、とりあえず契約社員のまま、保育園に入園すればよかったのではないですか?

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A子さんは、週3日・4時間勤務の契約社員のままなら、保育園は不要でした。というのも、A子さんの勤務日は土、日の昼間4時間と、水の18:00~22:00だったため、土日は家族が子どもの面倒を見られましたし、平日は保育園の預り時間とかぶらないからです。

 そして契約社員としてのA子さんの給料は10万6000円、手取りでは10万円を切ってしまい、その中から、数万円の保育料を払うことになってしまいます。保育料は預ける日数が少なくても割安にはなりません。

 

 さらにA子さんが見つけたのは自宅から遠い、通勤途中の駅の都心にある保育園で、自宅から電車を乗り継いで30分かかります。週3勤務の状態では預ける必要もないのに、勤務日でもない日も含めて遠くの保育園に、しかも給料の半分以上の保育料を払って預ける、というのは、あまりに非現実的だと判断しました。

 

 それでも、面談等で、正社員に復帰できる目途が立てば、それまではやむを得ずそのような状態で子供を預けることも考えたでしょうが、会社からは、いつ正社員に復帰できるのかまったく示されないどころか、保育園が決まることが正社員復帰の条件ではない、1年経ってからでないと戻れない可能性もある、などと言われてしまったのです。

A子さんの評価について

Q.会社にとって、戻ってきてほしい人材だったらここまでトラブルにならなかったのではないでしょうか?

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A子さんが産休に入る時点では、復帰は大いに期待されていたのです。A子さんが産休に入る前日にサプライズで当時の同僚全員からもらったメッセージアルバムがあります。その中にも、復帰を待ち望むメッセージが多数あるのです。

また、育休中も、同僚とやり取りする中で復帰を待ち望むメッセージをいくつも受け取っていました。育休延長を申し出たときには、当時の直属の上司から、「A子さんが戻ってきたら活躍してもらいたいミッションが、たくさん待っているはずです!」というメールをもらっています。 

Q.コーチとしての能力にも問題はなかったのですか?

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全く問題ありませんでした。会社では、スタッフの中で会社に貢献した人を従業員同士が投票する「ファカルティ―オブザイヤー」という表彰制度があったのですが、A子さんは2年連続で2位を獲得したのです。また、会社の創業者である元社長は、A子さんのクラスの受講生が涙を流しながら、「A子さんみたいな人間になりたいです。」と言っているのを聞いたことがあるそうです。それを聞いた元社長は、英語の指導を通じてここまで生徒に働きかけることができるのかと感心したそうです。
ちなみに、A子さんの産休中に現在の社長が就任しており、産休前にA子さんが社長と一緒に働いた期間はありません。

Q.A子さんに対して、会社から業務改善指導書がたくさん出されたそうですが、いつ頃、何通受け取ったのですか?

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業務改善指導書は、A子さんが、組合に加入すると、出されるようになりました。まず、2015年10月22日に直属の上司から1通交付され、その翌勤務日である10月25日に、社長から16通をまとめて渡されました。この時渡された16通の中には、日付が1か月以上も前のものが含まれていました。 同じ内容のものもありました。その後、11月、4月、6月にも数通出されています。

Q.どのような内容の業務改善指導書だったのですか?

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出された書面は「業務改善指導書」または「業務改善指示書」などという名称の書面でしたが、「業務」に関する内容はほとんどありませんでした。業務改善指導書に記載された内容は、A子さんが、復帰後の労働条件について会社と交渉するなかで自分の希望を述べたことや、同僚に相談をしたことを問題視するものです。これらはいずれも、当時のA子さんの「業務」とは無関係ですし、本来、労使が対等であるべき労働条件交渉の場面で意見をいうことが問題視されたという点が重大です。

しかも、事実に関する誤った指摘が数多く見受けられる上、会社が問題視するA子さんの行動が具体的に特定されていないものも多かったのです。また、同じ内容のものが繰り返し発出されたり、復帰前の事実まで取り上げられたりしていたため、A子さんの弁護団は裁判の中で、「これは『指導』ではなく『いじめ』である」と主張しました。

 会社との面談において、社長はA子さんの目の前で合計16通の業務改善指導書をすべて読み上げ、署名をするよう強く迫りました。 

Q.業務改善指導書について、裁判所はどのような判断をしたのですか?

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地裁は会社が発出した業務改善指導書について、「労働契約上の指示・命令の外形を用いて,懲戒処分の可能性等をちらつかせ,服務規律や企業秩序の維持と無関係な労働契約の締結に係る交渉場面における譲歩を労働者である原告に迫ったものであり,その態様は,業務改善指導書等の数にして17通もの多数に及ぶばかりか,本件組合から抗議を受けてもこれを止めないなど,使用者の労働者に対する行為として社会通念上許容されないものというほかない。」と判示しています。

Q.では、A子さんは、産休前には問題なく勤務していたということですか?

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そうです。A子さんが産休に入る前の勤務の状況は極めて良好でした。

A子さんの会社では、毎年社員の誕生日にメッセージを贈る習慣がありますが、そのメッセージを見ると、「太陽のように照らしてくれています。時に、とても繊細な優しさで気遣いをしていただけていたり心から感謝しています。」、「JBLのムードメーカーとして、常に皆に良い空気をつくってくれています。同時にマルチな才能によりJBLへ大きく貢献してくれています。」など、周囲への気遣いや会社への貢献ぶりを評価するものが並んでいます。

 

また、社員の夏合宿が行われた際、社員同士お互いリスペクトする点を書きあうという研修がありました。このとき、A子さん自身は妊娠中で参加していなかったのですが、「明るさと前向きな姿勢」、「周りへの気遣い」、「モノをつくるセンス」、「ロジックとアイデア力のハーモニー」などの評価コメントをもらいました。

Q.産休に入る前には、業務改善指導を受けたことはなかったのですか?

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A子さんは、産休に入る前には、会社から業務改善指導を受けたことは一度もありませんでした。書面はもちろん、口頭で注意を受けたこともなかったのです。

Q.高裁判決は、A子さんが会社に求めた具体的な勤務状況について、「自己の都合のみを主張し、土日のクラスのみを担当し、平日のクラス担当を全く考えていないなど全く現実味のないものである」としていますが、実際にそのような要求をしたのですか?

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いいえ、違います。A子さんは正社員復帰を求めた会社との面談の際、「平日夜間のクラス担当も検討する」と発言したり、平日夜クラスが担当できない場合の代替案を提示したりしているのです。A子さんの交渉態度は、「自己の都合のみを主張し、土日のクラスのみを担当し、平日のクラス担当を全く考えていないなど全く現実味のないもの」などではありませんでした。

       地裁判決は、A子さんの交渉態度について、「原告は、速やかに正社員に戻すよう求め、希望する労働条件を提示しつつも、被告代表者らに対して、正社員に戻ることができる時期や条件を尋ね、双方に不利益がないよう話し合って合意に至りたいとの柔軟な姿勢を示すなどして、交渉の手掛かりを探す姿勢を明らかにしていた」と認定しています。

Q.地裁と高裁では、なぜこんなにもA子さんに対する評価が異なったのでしょうか?

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A子さんが会社と復帰について交渉した面談について、取り上げ方が全く異なっているためです。高裁判決は、復帰に関する面談の中で、A子さんが労働条件に関する自分の希望を述べた部分のみを取り上げ、「自己の主張の実を主張」「全く現実味のないもの」などと評価しています。A子さんは、この面談の中で、会社の要求に沿うような発言をしていることが証拠上明らかなのですが、高裁判決はこの部分を取り上げませんでした。

 

これに対して地裁判決は、交渉過程におけるA子さんと会社の姿勢について、復帰に関する面談の内容などを考慮して、次のように評価しています。

「原告の交渉に臨む姿勢に対し,被告において形式的には育児休業終了後の女性の働き方の多様性を甘受するかのような姿勢を標ぼうしつつ,実際には原告のように多様な働き方を希望する者が現れた際には,これに誠実に向き合うどころか,むしろ被告の考えや方針の下に原告の考えを曲げるように迫り,これを改めないことを捉えて強引な業務指導改善を行う,原告の中核的な業務であったコーチ業務を奪う,原告の姿勢を批判・糾弾するといった姿勢に終始したことに照らせば,原告の受けた不利益の程度は著しいものといえ,被告の不誠実な対応はいずれも原告が幼年の子を養育していることを原因とするものである」 

録音とマスコミへの情報提供について

Q.A子さんは、平成26年9月に復職した直後から執務室内の会話を無断で録音していた、というのは本当ですか?

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いいえ。A子さんが、平成26年9月に復職した直後から執務室内の会話を無断で録音していたという事実はありません。

A子さんは、復職後、会社に正社員復帰の希望を伝えたところ、社長から拒否されました。A子さんは、会社の言うことが変わっているため、証拠に残す必要があると考え、同月19日の社長、上司、社労士との面談を録音しました。

 その後も、A子さんが録音していたのは、基本的に上司や社長との面談にすぎません。

Q.高裁判決によると、A子さんは、平成27年4月18日と7月11日に執務室で録音したのではないですか? 

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紛争が激化した後の平成27年4月18日と7月11日にA子さんが執務室で録音したことは事実です。

 しかし、いずれのA子さんの録音行為によっても、高裁判決に書かれているような、情報等漏えいのおそれやコーチ同士の自由な意見交換の妨げ等の企業秩序の侵害・業務の支障は現実に生じていませんし、そのおそれすらありませんでした。

Q.A子さんは、執務室内での録音をマスコミに提供したのですか?

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いいえ。

A子さんがマスコミに提供した録音は、平成26年9月19日と24日の面談時のものです。

Q.A子さんの録音行為は、「マスコミ関係者らに録音データを提供するためのものとうかがわれる」と認定されていますが、A子さんはマスコミに提供する目的だったのですか? 

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いいえ。時系列からいっても、そのようなはずがありません。

A子さんが録音した理由は、自己の正当な権利の行使のため、証拠を確保するためです。前述のとおり、A子さんがマスコミに提供した録音は、平成26年9月19日と24日の面談時のもので、マスコミに渡したのは録音から7か月以上たった平成27年5月頃です。7か月以上たってからマスコミに情報を提供したことをもって、最初からマスコミに情報を提供する目的で録音していたなどという高裁の事実認定は不自然です。

Q.マスコミ関係者に事実を異なる情報を提供したと認定されていますが、A子さんはマスコミ関係者に事実と異なる情報を提供したのですか?

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いいえ。A子さんが、マスコミ関係者に事実と異なる情報を提供した事実はありません。A子さんは、自らが体験した当時の認識を話しただけで、嘘は言っていません。しかし、高裁は、一言一句一緒でなければ虚偽であるかのような判断や、揚げ足取りと言わざるをえないような些末な違いをあげつらう判断をしています。

 1例をあげると、A子さんは、東京労働局から取り寄せた資料を見て、東京労働局が会社に対し、一定期間時短勤務後にA子さんを正社員とするよう検討してはどうかと伝えたことを知りました。しかし、会社は断固として、A子さんを正社員に戻しませんでした。A子さんは、このことを指して、会社が労働局の指導を無視したと述べました。ところが、高裁は、労働局の会社に対する発言は法律上の「助言」であり「指導」にはあたらないなどという理由で、「労働局からの『指導』はなかったのであるから、労働局の『指導』を無視したというのは、真実ではない」等という揚げ足取りのような認定をしました。

 

 また、平成26年9月19日の面談で、社長が、「ママコーチだから全てが優先されることでは決してなくて。」と発言しているにもかかわらず、高裁判決は、社長は「育児休業明けの者を優先しないとは述べていない」などと、まるで逆の趣旨になるかのような印象を与える認定をしました。

記者会見について

Q.なぜ記者会見を行ったのですか?

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労働事件の訴訟を提起した際、労働者側が記者クラブで提訴記者会見を行うことはよくあります。均等法や育児介護休業法の解釈が問題となる本件のような労働事件は、今後、裁判例の積み重ねが注目される分野の一つです。また、本件は、会社側から先に正社員の地位不存在確認請求訴訟を提起されたという珍しい事件でもあります。

以上から、弁護団が提訴記者会見に適した事案と判断し、記者会見しました。

Q.何が名誉毀損と判断されたのですか?

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地裁判決は、提訴記者会見での発言について、いずれも名誉毀損は成立しないと判断しました。しかし、高裁判決は、「平成26年9月に育児休業期間満了を迎えたが、保育園が見つからなかったため休職を申し出たものの認められず、相手方から週3日の契約社員になるか、自主退職することを迫られた。」「子供を産んで戻ってきたら、人格を否定された。」「労働組合に加入したところ、代表者が「あなたは危険人物です」と発言した。」という説明について、名誉毀損が成立するとしました。

Q.「平成26年9月に育児休業期間満了を迎えたが、保育園が見つからなかったため休職を申し出たものの認められず、相手方から週3日の契約社員になるか、自主退職することを迫られた。」という発言について、詳しく教えてください。

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高裁判決は、A子さんが自由な意思に基づいて契約社員契約をしたと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在し、会社がA子さんに対し,契約社員に変更するか又は自主退職するかを迫ったものではないから、A子さんが訴状に基づいて述べた内容は真実ではなく、名誉毀損が成立すると判断しました。

 

しかし、保育園が見つからなかったため、A子さんが休職を申し出たものの会社が認めなかったことや、会社がA子さんに対して、正社員として週5日の勤務が出来なければ自己都合退職になると説明したことを高裁判決は認めていますし、育児休業明けの勤務について被告が示した就業形態表(契約社員の勤務形態の説明もこれに書かれています)に基づき検討するよう述べたことは、会社代表者自身が認めています。このような事実経過から、A子さんが、休職が認められず、就業形態表に基づき、週3日の契約社員になるか自主退職になることを迫られたと感じることはごく自然であり、高裁判決の認定は誤っています。

Q.「子供を産んで戻ってきたら、人格を否定された。」という発言は?

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高裁判決は、A子さんのこの発言は事実に対する評価や意見を述べたものではないこと、証拠を踏まえても、A子さんが会社から人格を否定される言動を受けたことについて具体的な立証があったとはいえないとして、名誉毀損が成立すると判断しました。

 

しかし、A子さんが、上司の発言や数多くの業務改善指導書など、会社から人格を否定される言動をいくつも受けたことは、当初からA子さん弁護団が主張しており、高裁判決もこれらの事実があったことは認定しています。A子さんが会社から人格を否定される言動を受けたことについての具体的な立証はすでになされていたのです。

 「子供を産んで戻ってきたら、人格を否定された。」というA子さんの発言は、提訴に至った心境を述べたものであって、具体的事実を摘示したものではありませんから、この点でも高裁判決の判断は不当と考えます。

 

 このような高裁の判断がまかり通ると、会社や上司に対するパワハラの不法行為を主張した労働者が、記者に対して「人格を否定された」と述べたら、勝訴しなかった場合は会社に対する名誉毀損が成立することになりかねません。

Q.「労働組合に加入したところ、代表者が『あなたは危険人物です』と発言した。」という説明については?

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高裁判決も、会社代表者が、A子さんを指して「危険」と述べたことは認めています。それは、A子さんが録音した証拠から、会社代表者が、「あなたが組合とかって関係なく、危険であるというところで。」と発言した記録があるからです(A子さんがこのときの会話を録音していなければ、そのことだけでA子さんの主張が認められないおそれがありました)。

 ところが、高裁判決は、このときの会社代表者の発言について、録音には現れていない解釈を付け加えて、A子さんの主張は真実ではないと判断しています。

 すなわち、高裁判決は、「「危険」とは,クラスに穴を開けることが懸念されたなどの一審原告にクラス担当を任せることについてのリスクをもって「危険」という表現を用いたことが認められるのであって,一審被告代表者の上記発言が一審原告が労働組合に加入したことを嫌悪して行われたものとは認められない」、と述べたのです。

 

A子さんが平成26年10月上旬に会社に対し労働組合加入通知を送付しましたが、それからまもなくの同月中旬の面談で、被告代表者はA子さんに対し、「あなたが組合とかって関係なく、危険であるというところで。」と発言したことは録音内容から明らかです。重要な部分が真実であれば名誉毀損にならないというのが最高裁判例であり、会社代表者がA子さんを危険人物呼ばわりしたことは紛れもない事実なのですから、A子さんが提訴記者会見で述べた内容は真実であり、名誉毀損になるはずがありません。

私的メールについて

Q.A子さんが、多数回にわたり、勤務時間内に、会社から業務上使用が許されていたパソコン及びメールアドレスを私的に利用していたというのは事実ですか? 

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いいえ、A子さんが、多数回にわたり、勤務時間内に、会社から業務上使用が許されていたパソコン及びメールアドレスを私的に利用した事実はありません。

高裁が認定したA子さんの私的メールは、平成26年12月から平成27年6月までの7か月の間に6通のみです。この中には、送信時刻が23:08で、明らかに勤務時間外に送付したものも含まれています。また、A子さんが自分のメールに送ったメモも含まれています。 

Q.勤務時間中に業務外のメールしたことは、職務専念義務違反や規律違反にあたり、雇止め理由になるのですか? 

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 いいえ。そもそも、業時間内に業務と直接的に関係のない会話等をするといったことは世間で一般的に行われており、これを全て職務専念義務違反に問うことが許されるものではありません。

 裁判例でも、社会通念上許容される範囲を超え、職務に支障を生じさせる程度のものであった場合に初めて規律違反行為を問えると解されています。例えば、北沢産業事件(東京地判平19.9.18労判947号23頁参照)も、同趣旨を述べ、1か月に2通から3通、合計32通の私用メールの送付について、就業規則違反にあたらないとしています。A子さんの行為は、社会通念上許容される範囲を超え、職務に支障を生じさせる程度であったとは到底言えません。

正社員の地位が「合意解約」とされていることについて

Q.育児休業終了前の面談で、A子さんは退職すると申し出たのですか?

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いいえ、A子さんが会社に退職を申し出たことはありません。高裁判決37頁では、A子さんが退職の意向を表明したと書かれていますが、録音等の客観的な資料はなく、会社側の主張をそのまま認めているにすぎません。

Q.A子さんが自ら週3日の契約社員として復職すると会社に伝えたのですか?

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はい、会社側とA子さんが何度か面談した後、育児休業終了の約1週間前に、週3日の契約社員として復帰するとA子さんが会社に伝えたことは事実です。A子さんが会社から渡された就業形態の説明書には、「契約社員は、本人が希望する場合は正社員への契約再変更が前提です」と書かれていたので、一旦は正社員から契約社員になったとしても、保育園が決まったときに正社員に復帰したいと希望すれば正社員に復帰できると考え、会社にも「保育園が決まったら正社員として復帰したい」と伝えた上で、契約社員となることを受け入れました。

Q.契約社員となることを受け入れたのなら、A子さんが希望したからと言って正社員になれないのは当たり前ではないですか?

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いいえ、そうではありません。

A子さんは、育児休業を取得する前の約6年間、正社員として被告会社で働いてきて、育児休業復帰後も正社員として働きたいと希望してきました。「本人が希望する場合は正社員への契約再変更が前提です」と説明されたからこそ、一時的に契約社員となることを受け入れたに過ぎません。会社からも、A子さんが希望しても正社員に復帰できない場合があるとの説明はありませんでした。

Q.高裁判決には、A子さんは、会社が依頼した社会保険労務士から、正社員に復帰するためには改めて会社と合意することを要する旨の説明を受けたと書かれています。A子さんが希望するだけでは復帰できないとわかったのではないですか?

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いいえ。A子さんは、保育園が決まったら週5日勤務の正社員に復帰したいと述べた際、会社との合意を要すると言われただけで、希望しても復帰できない場合があるとは言われませんでした。担当するクラスのスケジュール調整をして、いつから復帰するかを合意することになると考えたくらいで、会社から正社員復帰を拒否されるとは考えもしませんでした。